よくわからない特殊印刷について。[箔押しと特色銀の話]
本日は、特殊印刷についてお話したいと思います。印刷に興味の無い方も、普段手にしている様々な印刷物がどんなものなのか?少しだけ学んでみても良いのでは?WEBデザインや映像制作など印刷に関係の無いクリエイターでも、技術的にはDTP(デスクトップパブリッシング〈卓上出版〉)と同様のスキルを持つわけですので、印刷の知識があれば、自分で様々な印刷物を作る事も可能になるかもしれません。
また、今現在グラフィックデザインやDTPの勉強をしている方にとっては、現場の知識として知っておいて欲しい内容です。
印刷について全般的な話なら過去記事をご覧下さい。
過去の記事で、印刷についての様々な話をしていますので、同時に見て欲しい内容となっています。
パッケージや表紙などのハイクオリティな印刷!“箔押し”について
こういった、印刷を見たことありませんか?印刷物の表面に、ピカピカの金や銀が張り付いているものです。とても高級感が有り、見た目も美しい印刷ですね。これを“箔押し”と言い、ホットスタンピングとも言います。
箔押しは、通常の印刷機での印刷とは全く違う仕組みになります。接着剤を蒸着させた金色や銀色の金属箔を、金属の型で用紙に熱圧着させる技術です。凸版印刷の技術となります。
箔押しの注意点
データ作成時の注意点としては、通常の印刷とは違い、4色カラーでデザインを作成後に、箔押し用の別レイヤーを作成し、黒1色(BL100%)で箔押ししたい形状を配置します。印刷物には必ずトンボ(トリムマーク)があり、このトンボを利用して正確な位置に箔がスタンプされます。
箔押しは、細い罫(線)や細かい作りのデザインには注意が必要です。罫線の太さは0.5mm程度までなら、何とか表示されるのですが、あまり細いと、剥がれてしまうようです。また、罫と罫の間は、1mm程度空けていたほうが良いようです。ようは隙間が狭いと箔を剥がす際に圧着した箔まで剥がれてしまう事があるそうです。
また、凸版の型で、マーク等を打ち出したものをエンボスと言います。このエンボス加工と箔押し加工はセットで使用する場合が多く、箔が浮き出して表示するため高級感が増してきます。こういった加工は、どうしても最大1mm程度ズレが生じる場合がある事も想定しておきましょう。
金色や銀色を印刷する、特色印刷について
前項の箔押し技術と比べて、低価格で、細かな表現が可能な印刷方法として特色金や特色銀を使う方法があります。この特色とは、“DICカラーガイド”というカラーチップの中に、金や銀の色も掲載しており、印刷時はこのカラーチップと同じ配合で特色と呼ばれるインクを作ります。特色は練り合わせて作った色なので、1色で様々な色や、蛍光色や金銀なども表現できます。
箔押しと比べて発色は弱く、銀に関しては、マット系の印刷時は輝きが鈍くなる傾向にあります。しかし簡単に行える表現としてはおすすめの方法ですので、パッケージや書籍の装丁などに利用すると言いですね。
注意点としては、特色は、印刷時に色の発色が変わってしまう事があります。これは、同じ配合でも気候や機材の使用状況などにより色味が違ってしまう場合があります。もし可能であれば、一度に出来るだけ多く印刷してしまう事をおすすめします。一度に多く印刷をすれば、色味も統一され、1枚単価も下がりますので経済的です。
▲DICカラーガイド〈大日本インキ科学〉全国の文具店や画材屋、ネットでも購入出来ます。
街の印刷会社の必要性について
地元で時々見かける、地域に密着した印刷会社があります。大きな工場を持った規模の大きな印刷会社から、中小の小さめの印刷会社まで。最近では印刷需要が少なくなり、こういった会社は大手のネット印刷等に押されてしまい、一般的には経営が苦しくなっているようです。しかし、上記のような高度な印刷技術に精通している場合も多く、特殊加工や複雑な折加工、封入作業等の人手がかかる作業、用紙や印刷方法についての相談など、グラフィックデザイナーにとっては、パートナーと呼べる会社と言えます。ホームページ制作の仕事やネット上で完了する仕事が多くなる中、実際にモノづくりをし、実物を納品出来る仕事は、完成物が仕上がった時の達成感は大きいと感じます。
当然、ディスプレイ広告やWEB関連、映像系の仕事なども非常にやりがいがあり重要ですが、私は、原点でもあるグラフィックデザイナーとして印刷物の制作はとてもやりがいと楽しみがあります。
紙の印刷物は、まだまだ無くなる事はないと思っています。時代に即したIT系の仕事と従来の紙の仕事。私は両方の仕事を楽しみたいと思っています。
編集後記
本日は、特殊印刷をテーマにした話です。若い頃、広告代理店に勤めていたため、印刷会社との付き合いが多く、その中でも色々と教えてくれる仲のいい営業の方がいました。そういった専門家に、あれやこれや聞いて、現場の作業や、出来ること、出来ないこと、経済的な紙の取り方など、一般的に知られていない情報を学ばせて頂いた記憶があります。現在でも、街の印刷会社さんは、色々と相談に乗っていただき、縁の下の力持ちです。少し紙やインクにこだわった名刺を作ってみたい場合や、起業された際に、封筒や会社案内を作成する場合に、ぜひ街の印刷会社に声をかけて頂けると嬉しいです。
特殊印刷については、今後シリーズ化して、記事を書いていきたいと考えています。特殊紙の話や表面加工、型抜きや複数の印刷方式についてなど。今後の記事も楽しみにしておいて下さい。
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代表 大津山 倖雄
クリエイティブディレクター
アートディレクター
Webディレクション、イラストレーション他、専門学校講師
1973年生まれ。福岡市で広告企画・制作に携わり30年以上。大手広告代理店の下請け会社で、グラフィックデザイナーを経験。その後、福岡の制作会社や広告代理店勤務を経て、平成18年4月に退職し、19年には個人事務所として独立。同時期、福岡デザイン&テクノロジー専門学校(旧 福岡コニュニケーションアート専門学校)にて講師契約。現在は、グラフィックデザイン、イラストレーション、WEBデザイン、WEBマーケティングに携わり、様々なクリエイターと共に制作を中心に業務を行っている。