デザイナーや漫画家等クリエイターの資料収集が重要な理由
本日のテーマは、“資料の大切さ”の話です。資料とは「それを使い、何かをするための材料である」となっています。しかし、クリエイターにとっては、大変重要な資料は、インターネットでちゃちゃっと探せばいいのか?という話になりますが、実際は良かったり悪かったりです。これからクリエイターになろうと思っている人は、特にこの資料について、一度じっくり考えてると良いと思います。
資料はアイデアやセンスを補完するためのもの
モノづくりする人にとって、重要なものは何かと聞かれたら、“良い発想やアイデア”や“人より優れたセンス”などがありますが、私はその中でも重要なものがイメージ力だと思っています。完成までの道筋やコンセプトに最も合ったビジュアル表現を可能にするのはイメージ力だと思っています。そのイメージ力は、完成後をイメージする想像力とも言えるものです。発想、アイデア、コンセプト、センス、技術、などがあっても、製作者であるなら最終的な仕上がりのイメージが出来ていない場合は、行き当たりばったりとなります。しかし、仕上がりのイメージなど、経験の少ないデザイナーやイラストレーターでは難しい。そこで、“資料”が重要になってきます。
商業デザインにおいては、ターゲットに対して有効な表現が出来ないといけません。さらに仕事により作るモノも様々ですので、その案件に関する知識と理解があり、その上で最も適したイメージを固めていく作業が必要です。その際に様々なクリエイターの作品は参考になり、良い刺激にもなります。
あまり興味のない題材の作品を作った場合と、自分の興味のある題材で、普段から良く知っているものを題材にした場合とでは、仕上がりに大きな差が出ます。モノを作る技術についても、仕上がりのイメージが無ければ意味がありません。
イメージを固めるためには、とにかく資料を探すこと。集める事は、作品作りの材料を集めているようなものです。また、そうやって自分の経験を増やしていく事で、センスや技術が磨かれていくのを実体験として学びました。
また技術も経験も少ない新人時代の話
全くセンスもなく、技術も経験もない頃は、何をどうして良いのか全くわかりません。出来ることは、資料を集めてそれを参考にデザインを作っていくことだけです。自分が作ったデザインは、どうして参考資料と比べて完成度が低いのか。
上司のダメ出しも多く、しばらくは上手くいきませんでしたが、見本として多くの資料をかき集めて、それをまさに“目を皿のようにして”細部まで観察してみると、今まで気づきもしなかった細かい部分の作り込みが甘い事が見えてきました。簡単な一つのデザイン処理であれ、文字を一文表示するにも、細部まで注意し観察する必要がありました。
何度も資料を頭に叩き込んで、何とか仕事をこなしながら、技術やセンスを磨いてきました。
経験や技術が少ない時には、良い資料を沢山見ることがクリエイターとしての能力を伸ばしていくものだと気づいたのです。
良い資料を集めるアンテナを持つ事
資料探しといっても、今から27年あまり前の話です。インターネットも資料を買うお金もありませんでした。なので、重要な仕事を始める時には、まず資料探しの旅に出ていました。会社の資料室にある資料では足りない場合も多く、外に出て良い資料を見つけることが大切でした。
女性向けの化粧品に関するパンフレットは、写真や表現などデザインの優れているものが多く、参考資料を探す際にデパートの化粧品売場に出向いて、資料を貰おうと思い店員さんに声をかけるまでウロウロしていた思い出があります。
また、福岡市のデパート、「大丸」で当時かっこいいフリーペーパーが置いてあると教えてもらい、それからは毎月もらいに行ってました。フリーペーパーでも物によっては非常にデザインが優れているものがあります。
当時もらっていた冊子は、今でも配布されています。
資生堂「花椿」という冊子です。現在は大丸には置いてないようですが、福岡でも数箇所手に入る所はあります。ネットで手に入れることもできるようです。
資生堂「花椿」はなつばき https://hanatsubaki.shiseido.com/jp/
また、資料は、案件に合わせて最も良い資料を探す必要がありますが、会社でも定期購読していた資料にも良いものがありした。30代〜40代以上の主婦層がメインターゲットの「家庭画報」です。家庭画報は、女性向けの情報や服装、特集などが組まれており、エディトリアル(冊子デザイン)の参考になりました。現在でも家庭画報は販売されています。
家庭画報https://www.kateigaho.com/magazine/
イラストや漫画制作にも通じる事
資料の大切さについて、ある著名な漫画家の先生の話ですが、大手少年誌を目指していた若い頃、編集者に声をかけられ、あまり望んではいなかった少女漫画の連載をする事に。しかしそこで学んだそうです。まず少女漫画の書き方から学んだのは、少女漫画の世界ではキャラクターの着ている服やアクセサリーなどは、全て実際に存在するブランドを使っていたという事らしいのです。細部の作り込みやステッチまで、しっかり調べて書き込む作業は大変だと思いますが、それがその後の作品に活かされ、少年誌では異色のファッショナブルで斬新な作品を生み出し、有名作家になるきっかけとなったと聞きました。話の詳細は記憶だよりですので、多少の勘違い等はあるかもしれませんが。おおよそそんな話で、有名な話のようです。細部の作り込みの大切さがわかる話です。
一つの絵を描くことにも、調べることやイメージする事が重要であり、その積み重ねが作品のレベルアップには欠かせないという事ですね。
編集後記
今回は、過去に実際に経験して学んだ話です。それも20代前半の若造時代ですが、今でも全く同じ事を念頭に置いています。しかし、経験が豊富になると、良く言えば効率の良い仕事を覚えると言えるのですが、実際は手抜きの方法を学んでしまい成長が止まってしまいます。まだまだ、学ぶべき事はより広く多くなっていくわけですので、初心に帰ってもう一度成長する努力が必要ですね。そのためのセルフコントロールや、モチベーションアップについてもいつか記事にしたいです。
記事は、毎日更新しています。明日の記事もお楽しみに!SNSで更新情報を発信していますので、是非、“フォロー”や“いいね”、お願いします。フォロー・ご連絡はこちら→メインTwitterアカウント
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代表 大津山 倖雄
クリエイティブディレクター
アートディレクター
Webディレクション、イラストレーション他、専門学校講師
1973年生まれ。福岡市で広告企画・制作に携わり30年以上。大手広告代理店の下請け会社で、グラフィックデザイナーを経験。その後、福岡の制作会社や広告代理店勤務を経て、平成18年4月に退職し、19年には個人事務所として独立。同時期、福岡デザイン&テクノロジー専門学校(旧 福岡コニュニケーションアート専門学校)にて講師契約。現在は、グラフィックデザイン、イラストレーション、WEBデザイン、WEBマーケティングに携わり、様々なクリエイターと共に制作を中心に業務を行っている。