人前で話すという事と初めて授業を担当した時の話。
本日は終日授業のため、外出しており長い記事は書けそうもありませんので、少し昔話でもご紹介したいと思います。
初めての仕事場
今から14年ほど前になります。33才ぐらいの頃でしょうか、これまで働いていた仕事を退職し、現在も働いている専門学校で授業を行う事になりました。経緯としては、元々は講師としてではなく、職員として就職するつもりだったのですが、これまでの技術や実績で、講師をしてみないかとのお誘いがあり、それならやってみよう!と思い、チャレンジしてみる事にしました。
初めての授業だったのですが、学校からは、わりと軽い感じで当日の朝、少し早めに来て簡単な説明と、授業素材を頂き、すぐに授業開始になりました。
実は、私は若い頃から人見知りがあり、あまり人前に出たいというタイプでなかったのと、さらに自分で何も下準備をしていない状態で、いきなりはじめての授業スタートでしたので、不安でかなりのレベルで緊張しておりました。
緊張の度合いとしては、大企業での初プレゼン、結婚式でのスピーチに次ぐ、緊張でした。
初回授業のクラスは、全員入学したばかりの1年生で、授業も一回目。生徒の方も全員緊張しており、教室の中に入った瞬間、全員が振り返りこちらの様子をじっと黙って伺っている状態でした。生徒さんも、初めてなので友達もいないので、私語もまったくなくシーンとした中でも授業開始でした。
実際に授業を始める前に授業素材を見ると、1年生の初回授業でしたので、すごく簡単な内容で、そのため大した説明もなく、始められるという事だったようです。
そして、すぐに授業の準備をし、スクリーンにパソコンの画面を表示し、挨拶、出席、自己紹介など、決めていた話をスタートしました。
そこからは、アドレナリンが放出していたのか、ずっと喋りっぱなしで、授業を夢中で行い、気がつけば朝から夕方まで、長時間声を出していたので、最後は声が枯れていました。
おそらく、聞き取りにくく、わかりにくい授業を行っており、今思えば生徒さんには悪かったなと思っています。
人前で話すという事について
それからしばらく授業を行いながら、フリーのデザイナーとしての活動も行っていました。仕事でも人前で話す機会が多くなり、人と話すことについて、段々と慣れてきます。人は何度も経験を繰り返していると、慣れてくるようで、それから1年ほどで、授業の緊張はほとんど無くなりました。
仕事の打ち合わせも慣れてきたので、落ち着いて行えるようになりました。
しかし、1年ほどではまだまだ慣れてきただけの話。年に数回生徒さんからのメッセージを受け取る機会があり、授業の駄目だしを実際に授業を受けている生徒さんから頂きました。
結果としては、非常に厳しい結果になっていました。
まず、話が長い、授業のスピードが早すぎる、授業内容についていけない。などの意見が多かったと思います。
それからは、授業内容についてもう少し真剣に取り組むようになりました。慣れていない時は授業を行うことだけで一生懸命で余裕があありませんでしたが、段々と余裕が出てくると、色々なことが見えるようになるようです。授業をわかりやすく、簡潔に、そしてサポートの時間をたっぷり用意するという事で、段々と授業の方向性が見えてきました。それからなんだかんだと10年以上経過しています。
人前で話すことはある程度慣れたとはいえ、やはり好きにはなりません。その理由は緊張するからです。
14年、講師をしても、全く慣れない部分があります。これは性格だから仕方ないのだと思います。しかし、ずっと授業をしてきた事で、体が慣れてしまうのか、なんだかんだとトラブル対応や、様々なタイプの生徒さんに対して対応が出来るようにはなってきます。実際に入学前の高校生などの体験授業なども担当していた事もあり、生徒さんを、お客さんとして授業をする事が私のスタイルになっていました。
こういった経験をしていると、人前に立ってしまえば、自然に落ち着いて授業を行えるようになってきます。
緊張して人前に立てないという人は、とにかく場数を踏んで、体を慣れさせ、そして準備を周到にしておく。ただ、これに付きます。あとはどうにでもなれ!と飛び込んでいくしかありません。
多少の問題も準備がされていれば対処可能ですし、何をするべきなのか、何のための説明なのか、事前に考えておく事で、現場でなんだかんだあってもちゃんと授業の形になってくれます。
また、私の場合、授業について来れなくなってしまった生徒さん等を集めた、補講を担当していたので、個別対応する事も多く、様々なタイプの生徒さんとゆっくり話をする機械を多くいただけました。
仕事ではあまり会うことの無い、若い生徒さん達の、日々の問題や悩みなどを多く聞きました。
授業にしてもそうですが、自分の考えを人に聞かせる事と、個々の人達の意見を聞き入れる2つの事がとても重要で、普段の個別対応によって生徒さんの学習意欲が変わってくるという事もわかりました。
結局は、多少頑張ってもカリスマ講師のように、上手な授業はできませんが、個々の生徒さんとの対話や、授業の進め方、そして笑顔。これにより生徒さんのモチベーションも変わってくるようです。話を聞いてあげて、褒めてることがあれば褒める。そうやって少しずつ授業を進めていると、授業の問題点は少しずつ解決していくようです。
最後に、人前で話す事についての話題に戻りますが、人前で話す時は、「自分の事よりも、相手のことを考える事が多くなればなるほど、緊張はなくなります。」緊張の原因は、自分がどう見られているか気にしすぎてしまい、自分で自分のハードルを上げまくった結果だと思っています。
自分はこの授業でいったい何をするべきなのか、そして授業を受けてくれている相手と向き合うようになってくると、自然体で話ができるようになってきます。
そもそも、私は人見知りの性格で、その性格は残念ながら今でも変わりませんでした。最近でも、近所の方とエレベーターで一緒になっても何を話して良いのかわからず、ニコニコするだけで会話にはなりません(笑)
しかし、10年を超える経験は、しっかりと少しずつ脳に蓄積していくようで、様々な場面、自然と最適な対応がとれるようになるのも、経験からくるものだと思っています。今まで色々な事がありましたが、どうにもならなかったことはありませんでした。
今回、コロナの影響で、オンライン授業などが始まり、また初めてづくしの授業ばかりになり、久々にがっちり緊張しましたが、なんだかんだと、どうにかなっています。生徒さんにとって、何が自分のためになるのかを伝えることが出来、そのために考えた授業であれば、トラブルはつきものですが、最終的には満足していただける授業が出来ると思っています。
また、機会がありましたら、授業や生徒さんとの話などを書きたいと思います。
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代表 大津山 倖雄
クリエイティブディレクター
アートディレクター
Webディレクション、イラストレーション他、専門学校講師
1973年生まれ。福岡市で広告企画・制作に携わり30年以上。大手広告代理店の下請け会社で、グラフィックデザイナーを経験。その後、福岡の制作会社や広告代理店勤務を経て、平成18年4月に退職し、19年には個人事務所として独立。同時期、福岡デザイン&テクノロジー専門学校(旧 福岡コニュニケーションアート専門学校)にて講師契約。現在は、グラフィックデザイン、イラストレーション、WEBデザイン、WEBマーケティングに携わり、様々なクリエイターと共に制作を中心に業務を行っている。